「また逃げたって思われるかもしれない」「どうして私は続けられないんだろう」
そんなふうに自分を責めてしまった経験はありませんか?
HSPさんは感受性が豊かで、他人の気持ちや場の空気を敏感に察知する力を持っています。その一方で、強い刺激やストレスにさらされやすく、限界を感じるのも早い傾向があります。そんなHSPさんが「逃げ癖がある」と思い込んでしまうのは、実はとてももったいないこと。
この記事では、「逃げ」と見られがちな行動の裏にある、HSPさんの「自分を守る力」に目を向けていきます。
(そもそもHSPとは何か知りたい方は「HSPとは」の記事をお読みください)
自分を責める前に|HSPと「逃げ癖」という言葉
「また辞めたの?」「続かないね」「我慢が足りないんじゃない?」
こうした言葉は、HSPさんにとって深く刺さることがあります。実際には、無理を重ねてギリギリまでがんばっていたとしても、結果として離れたことで「逃げ癖」というレッテルを貼られてしまうこともあります。
HSPさんは以下のような特徴を持っているため、一般的な基準で評価されると「弱い」「逃げてる」と誤解されやすいのです。
- 人の気持ちや言葉の裏を敏感に察知する
- 刺激(音・光・におい・人間関係など)に疲れやすい
- 無理をしてでも人に合わせようとする(過剰適応)
- 限界まで我慢してしまう
こうした特性を理解せずに「逃げた」と一言で片づけられてしまうのは、とてもつらいことです。
本当に「逃げている」?それとも「守っている」?
HSPさんがすぐに環境を変えたがったり、人間関係から距離を取ったりすることに対し、「また逃げてる」と感じる人もいるかもしれません。しかし、それは“早く気づける力”とも言えます。
自分にとって危険なもの、ストレスの元になるものを敏感に察知できるというのは、生きるうえで大切な能力です。そして、それに反応して行動することは「自己防衛」です。
ここで思い出してほしいのが、「逃げるは恥だが役に立つ」という言葉です。この言葉は、ハンガリーのことわざであり、テレビドラマでも使われたことで多くの人に知られるようになりました。意味としては、「一見恥ずかしいことのように思えても、時には逃げることで結果的に状況がよくなることもある」というものです。
HSPさんにとって、「逃げること」は決してマイナスな選択ではありません。むしろ、自分を守り、次のチャンスへつながる「戦略的な選択」と言えるのではないでしょうか。
なぜHSPさんは逃げたくなるのか
HSPさんが「その場にいられない」と感じる背景には、以下のような要因があります。
五感が敏感で、刺激を受け取りやすい
人混み、騒音、強い光などに過敏に反応しやすいです。
感情が動きやすく、共感力が高い
他人の怒りや悲しみが、自分のことのように感じてしまうことも。
空気を読む力が強く、周囲の期待に応えようとしがち
無理を重ねてしまい、突然限界が来ることがあります。
過去のつらい経験を思い出しやすい
以前の職場や人間関係で傷ついた経験が、似た状況に過剰反応を起こすことも。
こうした感覚や記憶が積み重なると、「ここはもう無理」と感じるスピードが早くなるのは自然なことです。
HSPさんが「逃げ癖がある」と思い込んでしまう心理
HSPさんが自分に対して「また逃げた」と感じる背景には、育った環境や思い込みの影響もあります。
- 幼少期に「がまんしなさい」「逃げるな」と言われてきた
- 学校や職場で「継続こそが正義」と教え込まれた
- 他人と比べて「自分は劣っている」と感じやすい
- 成果や評価でしか価値を感じられなくなっている
こうした考え方に無意識に影響されて、「逃げる自分はダメ」と決めつけてしまっている方も少なくありません。
ですが、それは本当にあなたの“本心”でしょうか?もしかすると、それは誰かに刷り込まれた価値観かもしれません。
一度立ち止まることの大切さ
たとえば、電車に乗っていて「この先に危険がある」と感じたら、途中で降りるのは当然の行動です。それと同じように、自分の直感や心の声を信じて「ここから離れたい」と思うのは、ごく自然な判断です。
HSPさんにとって大切なのは、「立ち止まる」「離れる」ことをネガティブに捉えないことです。
- 自分を守るために離れる
- 心を休めるために止まる
- 再スタートするための時間をとる
これはすべて“前に進むための選択”でもあります。
「続けることが正しい」「耐えることが美徳」という考えをいったん横に置いて、自分の声に耳を傾けてみてください。
HSPさんが「逃げ」と向き合うときの視点
「これは本当に逃げなのか?」「自分にとって必要な選択なのか?」という視点を持つことで、HSPさんは自分を責める感覚から少し解放されます。
以下のような問いかけをしてみてください。
- この環境で私は安心できているか?
- 無理をしていないか?
- 本当は、どんな状態なら心が軽くなるのか?
そして、次のような意識も大切です。
- 他人のペースではなく、自分のペースを大切にする
- 「逃げたくなる自分」を否定せず、むしろ理解してあげる
- 必要なら、専門家や信頼できる人に話を聞いてもらう
「逃げる自分を許す」と決めることは、弱さではなく“強さ”です。
まとめ|逃げることは悪ではなく「自分を大切にする選択」です
HSPさんにとって、「逃げる」という行動は自己防衛であり、自分を守るための正当な判断です。
それは「逃げるは恥だが役に立つ」という言葉が示すとおり、一時的に恥に感じたとしても、結果的には人生を前向きに変えていく選択にもなります。
どうか、「逃げ癖がある」なんて言葉で自分を傷つけないでください。あなたがその時々で選んできた行動は、心の声を聴いた証でもあります。
今までがんばってきた自分を認めて、これからは「逃げる」ではなく「選び直す」と言い換えてみてください。それだけで、見える世界が少しやさしくなるかもしれません。

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